税理士法人松岡・野田コンサルティング 



貸宅地と貸家建付地(専門家向け)

コンビニへ貸付、駐車場部分は貸宅地評価が可能か?!

コンビニの場合、事業用定期借地権での契約が一般的ですが、「駐車場部分の貸宅地評価が可能か?!」のテーマに絞るため、ここでは普通借地権についてのケースで説明します。

財産評価基本通達の規定を見ますと、「借地権の目的となっている宅地の価格は・・」で始まります。ここで読み取れるのは、借地権の目的となっている宅地であるかどうかが焦点となっており、その判断により、貸宅地評価になるのかならないのか、が分かれます。では次に、借地権について考えます。借地借家法2条1項で「借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」と規定しています。

ここでコンビニのケースを考えると、建物の底地だけに借地権があると判断し、駐車場部分は自用地評価をして相続税申告をする専門家も多くいるのが現状です。皆さんは正しいと思いますか?私の考えはこうです。契約書上は建物所有を目的として土地を賃借し、たまたま空いた部分を駐車場として利用しているケースがあるならば、駐車場部分も借地権の目的となる土地に該当し、貸宅地評価は可能であると。貸宅地評価の考え方は、借地権の目的となっている宅地であるか否か、では借地権とは、現に建物が存在していなくても、建物所有を目的として土地の賃貸借契約をすれば、今現在は駐車場利用していても、そのうち建物を建築・増築などすることが権利として存在しており、そのような権利が存在しているからこそ、地主にとって不自由な土地となり、この不自由部分を評価減するために貸宅地評価が存在するのです。

ではコンビニの駐車場部分は、本当に貸宅地評価が可能か?!

答えは、自用地評価になるコンビニもあれば、貸宅地評価になるコンピ二もあり、契約書を調べないとわからない、です。土地賃貸借の目的が、建物の所有のみであれば貸宅地評価は可能です。一方、駐車場利用も目的として記載していれば、その部分に借地権は存在せず、自用地評価になります。

アパートの駐車場部分、貸家建付地評価が可能か?!

これは実務上も一般的に行われているので、抵抗はないと思います。では、貸家建付地評価が可能な根拠について見ていきます。財産評価基本通達では、「貸家(借家権の目的となっている家屋をいう)の敷地の用に供されている宅地の価格は・・」と規定しています。ここでポイントとなるのは、アパートの駐車場部分が、貸家の敷地の用に供されていると言えるかどうか、です。通常はアパート事業をするにあたって、駐車場の確保が必要であることから、部屋の賃貸借と駐車場の賃貸借がセットになっている場合が多く、そのような場合、駐車場部分も貸家の敷地の用に供されている、と解釈できます。これがアパートの駐車場部分を貸家建付地評価する根拠です。

では、すべてのアパートに係る駐車場部分について、貸家建付地評価が可能かどうか、答えはNOです。居住者以外に駐車場を賃貸していると、その部分は自用地評価となります。居住者用だったとしても、アパートから道を挟んで駐車場がある場合には、自用地評価となります。

駐車場における貸宅地評価と貸家建付地評価の違い

賃貸借契約書によって判断するのが貸宅地、利用状況によって判断するのが貸家建付地です。貸宅地評価において重要なのは、借地権の目的となっているかどうかであり、それは契約書により判断が可能です。建物部分の底地の賃貸借契約と、駐車場部分の賃貸借契約を、それぞれ別に契約していれば、駐車場部分に借地権は存在せず、したがって、相続税法においても貸宅地評価の余地は無くなります。同一契約であったとしても、契約上の目的を駐車場利用と記載していれば、駐車場部分に借地権は存在せず、同じく貸宅地評価はできなくなります。また、実質的に借地権が存在しないと税務当局に認定された場合、貸宅地評価はできなくなります。(以下の国税不服審判所裁決事例参照)

一方、貸家建付地評価では、駐車場部分を別契約したとしても「貸家の敷地の用に供されている」と実質的に判断できれば、同一敷地内であれば貸家建付地評価は可能となります。

国税不服審判所 裁決事例1

借地権の設定されている土地の評価に当たり、自用地としての価額から控除すべき借地権の価額はないとした事例

▼ 平成231117日裁決

《ポイント》 この事例は、借地権の設定されている土地の評価に当たり、賃貸人と賃借人との間においては、借地権の価額についての認識のないことが明らかであることから、当該土地は、自用地としての価額により評価すべきであるとしたものである。

《要旨》 請求人は、請求人の父(本件被相続人)の相続(本件相続)により取得した土地(本件土地)を、本件相続開始の日において、図書館建物及び駐車場施設の敷地としてa市との間で賃貸借契約を締結し(本件賃貸借契約)、賃貸していたのであるから、本件土地の価額は、財産評価基本通達25《貸宅地の評価》の定めに従い、自用地としての価額から借地権の価額を控除した価額で評価すべきである旨主張する。 しかしながら、確かに、本件賃貸借契約に係る契約書(本件賃貸借契約書)の記載内容及びその解釈並びに本件土地の使用の主目的からすれば、本件土地には、当該図書館建物の所有を目的とする借地権の設定がされたものと認められるものの、本件賃貸借契約書には、本件被相続人が本件土地の譲渡を希望するなどの場合には、賃借人であるa市は更地価格を意味する「適正価格」で買い取る旨が定められていること、本件賃貸借契約における賃貸料の額からみて、本件土地上の借地権の価額については何ら考慮されていないこと、a市が本件土地に係る鑑定評価を依頼した際に、a市は本件土地を買い取るに当たって考慮すべき借地権の価額は存在していなかったと認識していたものと認められ、また、実際にも本件土地は鑑定評価額に近似した価額で請求人からa市に譲渡されており、借地権の存在を考慮した価額で譲渡されたものではないことが明らかであることなどからすると、本件相続開始の日において、借地権が存した本件土地の自用地の価額から控除すべき借地権の価額はなかったと認められる。このような場合には、財産評価基本通達を形式的に適用すべきではなく、本件土地の評価に当たり、自用地としての価額から借地権の価額を控除しないこととするのが相当である。

《参照条文等》 借地借家法第2条 相続税法第22

国税不服審判所 裁決事例2

中古車展示場用地としての本件土地の賃貸借契約は、その土地使用の主たる目的がその地上に建物を建造し、所有することには当たらないとして、本件土地は、貸宅地として借地権を控除して評価することはできないとした事例

▼ 裁決事例集 No.69 - 264

請求人らは、本件土地の中古車展示場等の敷地としての賃貸借契約について、貸付けの際に建物の建築を承諾していたこと及び本件建物は堅固建物であり建物表示登記がされていることから、借地法の適用があり、本件土地は貸宅地として評価すべきと主張する。 しかしながら、借地法第1条にいう「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、土地賃借人の土地使用の主たる目的が、その地上に建物を築造し、これを所有することにある場合を指し、借地人がその地上に建物を築造し、所有する場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときはこれに該当しないと解されるところ、[1]本件建物等は、あくまでも本件土地の一部を占めるにすぎず、大部分は自動車展示場及び進入路として利用されていること、[2]賃貸借契約書では、本件土地の賃貸借の目的を、自動車展示場、自動車置場及び営業事務所の敷地とし、営業所の建物の建築は認めているものの、永久建造物とすることはできず、建物の表示登記及び保存登記を禁じていること、[3]本件建物等は、鋼板葺の軽量な屋根を支える簡易な構造の建物で堅固建築物とは認められず、その収去は借主の負担において行うとされていること、及び[4]賃貸借契約には権利金の取決めがなく、土地の賃借人は、土地の明渡しに際して立退料を請求しないと答述していることから、本件賃貸借は、本件建物等の所有を主たる目的とするものとは認められない。

平成17517日裁決

国税不服審判所 裁決事例3

バッティングセンターの待合フロアー等の建築物が借地上にあったとしても、その敷地は借地権の目的となっている土地に当たらないとされた事例

▼ 裁決事例集 No.59 - 332

評価通達にいう借地権とは借地借家法第2条第1項に規定する建物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいい、この「建物の所有を目的とする」とは、借地使用の主たる目的がその地上に建物を建築し、これを所有することにある場合をいうのであるから、借地人がその地上に建物を建築し、所有使用とする場合であっても、それが借地使用の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、「建物の所有を目的とする」に当たらないと解される。 これを本件についてみると、賃借人は本件敷地を含む本件土地を昭和53年ころから本件相続開始日まで引き続いてバッティングセンター経営の事業用地として利用し、本件待合フロアー等はバッティングセンターと構造上一体となっており、本件建築物はいずれもバッティングセンターの経営に必要な付属建築物として建築されたものと認められるから、本件土地の賃貸借の主たる目的は、バッティングセンターとして使用することにあると言える。 そうすると、賃借人が本件建築物を建築所有していたとしても、それは本件土地をバッティングセンターとして使用するための従たる目的にすぎないというべきであるから、本件賃貸借は、借地借家法第2条第1項に規定する建物の所有を目的とする賃借権に該当せず、したがって、本件敷地には、借地権は存在しない。

平成12627日裁決

 

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